- 強み・特色
1902年にわが国で2番目の官立高等商業学校として設立された神戸高等商業学校は、その後、1929年に神戸経済大学に昇格し、1949年に神戸大学となった。この過程で社会科学系の部局は、当初の1学部から、現在では4研究科1研究所(法学研究科、経済学研究科、経営学研究科、国際協力研究科、経済経営研究所)の計5部局となり、260名以上の専任教員を抱える、わが国における社会科学の一大研究拠点となっている。もともと実学志向の強い学風であったが、その一方で各研究分野は進歩とともに細分化される傾向にあり、社会の経済・社会問題が複雑化していく中で、今一度種々の専門分野の研究者を結集し、高度な分野横断的研究を強く意識して発展させることが社会から要請されるようになった。
このような社会的要請に応え実践する拠点として、2012年4月に神戸大学社会科学系教育研究府が設立された。そこでは、社会科学系5部局の連携によりさまざまな先端的・学際的プロジェクトが実施された。2016年4月には、これらの研究を社会システムイノベーションの総合的研究と位置づけ、より強力に進める拠点として、社会科学系教育研究府を改組して社会システムイノベーションセンター(以下、「本センター」と呼称する。)が設置されることとなった。
本センターは、社会科学系教育研究府で行われてきた分野横断研究を継承し、学内諸研究組織とも連携して、社会システムイノベーションの創出と社会実装を推進し、社会課題の解決に貢献する分野横断・文理融合・異分野共創研究を行うことを目的とする。社会問題を効果的に解決し社会に受け入れられるためには、社会システムを全体としてイノベーション創出型へと革新する必要がある。そこで、社会を「社会制度」、「科学技術」、「市場」の3層から構成されるシステムと捉え、その全体を研究対象としつつ、この3層を「ビジネスプラットフォーム」と「パブリックポリシー・ウェルフェア」の2本柱を架け橋として有機的に結びつけた研究結果を政策提言・社会実装することにより、社会問題を解決することを目指す。そのため本センターでは、先端的な実証研究によって社会問題を分析してその解決を目指しつつ、社会問題解決のための社会システムの変革と社会実装を目指す論理やプロセスの一般化・理論化を図る手法を採用し、社会に貢献しつつ学問的にも世界最高水準の社会システムイノベーションの総合的研究拠点を形成し、社会システムイノベーションの専門家たる若手研究者を育成していく。
さらに、2022年10月から本センターは、国立大学経営改革促進事業の一環である神戸大学デジタルバイオ&ライフサイエンスリサーチパーク構想における神戸大学の4大フラッグシップ研究拠点を結びつける中核拠点として、社会科学のみならず文理融合・異分野競争研究の促進とその成果の社会実装を担う役割も担っている。
このような分野横断・文理融合・異分野共創研究を通じて社会問題を解決するという理念のもと、本センターは社会科学系5部局の教員をリーダーとする研究プロジェクトを毎年募集している。申請されたプロジェクトは8研究部門に分かれて研究を遂行し、研究成果を地域社会・国際社会にフィードバックしている。本センターはこれら分野横断・文理融合・異分野共創的研究プロジェクトが立ち上がる場を提供し、各プロジェクトに胚胎するアイデアを成長させ世界に広める先端的社会科学研究の発信源として今後さらに大きな役割を果たすことを見込んでいる。
2022年度以降の第4期中期計画のもとでは、エビデンス・ベースの政策提言と社会実装により社会問題を解決し、SDGs(Sustainable Development Goals; 持続可能な開発目標)へ貢献する学問的に世界最高水準の研究拠点の構築を目指している。そこでは、社会科学を核にした異分野共創・社会共創を基礎に先端的な実証研究によって問題を分析し、国際社会、国・地方公共団体、地域住民、産業界、専門職業団体などのステークホルダーとの協働を推進している。
さらに、2022年10月から本センターは、神戸大学デジタルバイオ・ライフサイエンスリサーチパーク推進機構における神戸大学の4大フラッグシップ研究拠点を結びつける中核拠点として、社会科学のみならず文理融合・異分野共創研究の促進とその成果の社会実装を担う役割も負うこととなっている。
最近における特記事項・社会貢献
特記事項
2023年度には18の研究プロジェクトを実施し、学内研究者68名、国内研究者45名、海外研究者21名の研究者が参加している。
<表1> 研究プロジェクト数と参加人数
項目 | 年度 | |||||||
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2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
研究プロジェクト数 | 39 | 49 | 51 | 44 | 51 | 48 | 22 | 18 |
参加研究者総数 | 223 | 293 | 298 | 244 | 250 | 267 | 151 | 134 |
学内研究者数 | 116 | 137 | 142 | 125 | 130 | 117 | 80 | 68 |
海外共同研究者数 | 36 | 49 | 50 | 38 | 33 | 42 | 22 | 21 |
海外共同研究機関数 | 30 | 42 | 44 | 34 | 30 | 40 | 21 | 20 |
プロジェクト構成員は、いずれも国内および国外でトップを形成する学会に所属しており、社会システムをイノベーション創出型へと変革する独創的、創造的な研究を行っている。また、その研究成果は国内および国外のトップジャーナルにおいて公表されるとともに、シンポジウム等で報告されている。
具体的には表2で示されたとおり、創設以来高い水準で推移しており、2023年度には18件のプロジェクトから11件のWoS論文の刊行が報告されている。
<表2> 本センター主要業績指標
項目 | 年度 | |||||||
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2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
2020年 |
2021年 | 2022年 | 2023年 | |
Wos論文数 | 27 | 27 | 38 | 33 | 45 | 38 | 18 | 11 |
国際共著論文・著書数 | 18 | 19 | 32 | 26 | 45 | 28 | 10 | 10 |
政策提言・社会実装 | 21 | 21 | 39 | 23 | 46 | 39 | 20 | 27 |
シンポジウム等開催件数 | 23 | 23 | 37 | 34 | 25 | 23 | 16 | 15 |
また設立当初から活発に国際共同研究が行われており、2023年度は、20の海外研究機関から21名の研究者が参加し、国際共同研究を推進した。2023年度には11件のWoS掲載論文のうち国際共著論文は4件であり、加えてWoS掲載雑誌以外の雑誌に2件の国際共著論文が刊行されている。国際共同研究を中心とする研究成果は、論文に加え、シュプリンガー社のブリーフ・シリーズおよびモノグラフ・シリーズを通じて刊行している。2023年度はモノグラフ・シリーズ4冊を刊行した。
今後も海外の研究機関との共同研究への支援を継続し、また国際共同研究の成果公表および普及への支援も強化する。