エコノ・リーガル・スタディーズ(ELS)について
2003年から5年間実施された文部科学省の研究拠点形成等補助金事業である21世紀COEプログラムの一つの成果として本学における法学、経済学、経営学の領域横断的研究交流は大きく進展した。エコノリーガル・スタディーズ(ELS)は、この成果を引き継ぎ、21世紀社会において法学と経済学が建設的な連携・協働を果たすための基盤の形成を目指すもので、経済学的分析手法を法現象に一方向的に適用するのではなく、法学的発想・方法と経済学的発想・方法の双方を取り入れつつ今日の複雑な社会現象に複眼的に接近しようとする学際的プロジェクトである。
本プロジェクトは研究活動と教育活動を二本の柱とする。研究活動としては、今日的な社会問題を、法学と経済学双方の知見・方法を領域横断的に活用しながら解決することを目指しており、現に競争市場・規制・労働・知的財産・環境などの主題を対象として新たな学際領域を拓きつつある(その成果の一端は、Econo-Legal Studies: Thinking Through the Lenses of Economics and Lawとして,2021年にSpringer社から刊行された)。これを通じて本学は、実務的・学問的に大きな関心を呼んでいる法学と経済学との学際的研究において中核的地位を担うこととなっている。
教育活動としては、2010年度から、学部生を対象とする「法経連携専門教育(ELS)プログラム」を法学部と経済学部が協働して展開してきた。この小人数教育中心のプログラムで提供される授業科目では、法学部と経済学部の教員が毎回の授業を合同で担当することを通じて、法学・経済学の両方の素養を2年間で身につけられるようにデザインされており、履修者自身の問題関心を涵養しつつ主体的・能動的に研究を進めていくアクティブラーニングを採用している。さらに、2019年度には、対象を大学院生に拡充して、「エコノリーガル大学院プログラム(ELS-G)」を開始した。ELSの発想を研究活動に活かそうとする大学院生を対象とするこのプログラムでも順調に履修者が増えつつあり、また、法経以外の研究科の学生による履修例も生じてきているなど、本プロジェクトの取組は次第にその範囲を拡大しつつある。近年では、可能な限り、海外での研究報告の機会を提供しようとしており、(コロナ禍による影響は不可避だったものの)国際的要請にも応えるよう努力している。
これらの活動を通じて、本プロジェクトでは法経双方の手法に通じ、時代の要請に即応した学部学生・大学院学生の育成を図っている。プログラム修了時には、受講生の修了論文集である「エコノリーガル・スタディーズ研究論文集」を編纂し成果を公刊している。