IT化とビッグデータの蓄積・利用をめぐる社会システム研究部門 労働者のテレワークにともなうプライバシーをめぐる法政策課題の比較法的研究*

構成メンバー

★はプロジェクトリーダー

★大内 伸哉(法学研究科・教授)
 櫻庭 涼子(法学研究科・教授)

研究の目的と概要

 コロナ禍において.政府からの自宅待機要請を受け,企業は多くの労働者に対して在宅就労をさせることになった。テレワークと呼ばれる就労は,勤務場所が自宅になるという点で,通常のオフィスワークとは全く異なることになる。テレワークとなると,上司は部下の就労に対して直接的な監視はできなくなるが,他方で情報通信技術の発達は遠隔から従業員の状況を把握することができる。例えば従業員にはカメラの設置を要請し,その結果,常時,企業は従業員を監視下に置くことができる。あるいは最新の技術を使うと,従業員の集中度をチェックすることもできる。こうした方法は,職場において上司が直接対面で従業員を監視するのとは違い,機械によって監視がなされるという点で,どのような違いが出てくるのかが問題となる。具体的には.仕事中における従業員のプライバシーは,そもそもどこまで保護されるのか,また情報通信技術を使って機械によって監視をするということにより,どのような違いが出てくるのか(プライバシー侵害の程度,ストレスの問題,仕事の効率の低下の有無など)である。これはさらに,デジタル技術を使って従業員に関する様々な情報をデジタルデータとして収集し,それを人工知能(AI)によって分析するといった形で,新たな人事管理の手法として活用することができる。これは従来の人事管理の延長線上にあり,単にそれを効率的に行ったものと評価してよいのか,それともまったく違ったものとして別途に規制のあり方を考えなければならないのかといった点が検討される必要がある。本研究では,これらの問題は,いずれもデジタル技術の活用にともない,既存の労働法では対応が容易ではない新たな政策課題であると捉えたうえで,それについて既存の労働法にはない新たな視点で新たな解決方法を模索して社会に向けた提言として発信することを最終的な目的とする。

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