市場研究部門 21世紀のラテンアメリカにおけるグローバリゼーションと所得格差に関する研究

構成メンバー

★はプロジェクトリーダー

★村上 善道(経済経営研究所・助教)
 濱口 伸明(経済経営研究所・教授)
 佐藤 隆広(経済経営研究所・教授)
 島村 靖治(国際協力研究科・教授)
 野村 友和(大阪経済大学情報社会学部・准教授)

研究の目的と概要

ラテンアメリカ諸国は2000年代には、一次産品の価格上昇の恩恵を受け、経済成長と所得分配の平等化の実現に成功したが、世界金融危機とその後の世界経済の減速受けて、2010年代は経済成長も鈍化し、所得分配の改善も停滞傾向にある。同諸国は、新興国の中でも特に所得格差の大きい地域として知られているが、高い格差は人的資本形成の阻害や、政治的・社会的な不安定性を高めることを通して持続的な経済成長を阻害する要因となることが指摘されており、いかにして「中所得国の罠」を避けるかという観点からも、グローバリゼーションと格差の関係は重要な研究テーマである。チリはラテンアメリカ諸国の中でも、最も早くグローバル経済への統合を進めるなど、経済自由化の先駆例であると共に、良好な経済パフォーマンスを維持していることが知られている。一方でチリは銅を中心に資源依存度がラテンアメリカ諸国の中でも特に高く、さらに近年は高い格差・不平等に対する不満を基本的な背景として大規模なデモが頻発するなど、このテーマを研究する上でとりわけ重要な事例である。そこで、本プロジェクトではラテンアメリカ諸国の中でも特にチリに重点を置いて、グローバル化が所得格差に与えた影響に関して、複数のマイクロデータを駆使して実証研究を行う。チリのこの時期におけるグローバル化が所得格差に与える経路としては、地域貿易協定の発効に伴う実行関税率の一層の低下や一次産品価格の変動に着目する。さらに、所得格差の構成要素としては技能間の賃金格差だけでなく、企業間や地域間の賃金格差にも着目し、さらに高等教育の拡大や多様化といった供給面の要因も考慮する。これらを通して、チリにおいて2000年以降のグローバル化が所得格差に与えた影響を包括的に明らかにし、ラテンアメリカ域内および域外の新興国・途上国の事例とも比較しながら、グローバル化が平等な所得分配をもたらすために必要なメカニズムを明らかにする。

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