社会制度研究部門 新型コロナウイルス危機後の社会システム*

構成メンバー

★はプロジェクトリーダー

★浜口 伸明(経済経営研究所・教授)
 高槻 泰郎(経済経営研究所・准教授)
 鎮目 雅人(早稲田大学政治経済学術院・教授)
 橋野 知子(経済学研究科・教授)
 柴本 昌彦(経済経営研究所・准教授)

研究の目的と概要

 2020年は新型コロナウイルスの世界的感染拡大により,健康,生活,経済に深刻な危機がもたらされている.日本においても例外でなく,学校の休校やイベントの自粛などの措置が取られたにもかかわらず,特に3月後半から感染者数が加速的に増加した.政府は4月7日に兵庫県を含む全国7都府県に緊急事態宣言を発し,人と人との接触を8割減らすことを要請した.緊急事態宣言の対象は4月16日に全国に拡大された.日本政府の対策は諸外国のそれと比較すると強制的に行動を制限するものではないが,それでも飲食店や遊興施設の営業自粛,在宅勤務の要請,県を越える移動の自粛などが実効を伴って実施されている.このことによる企業業績,勤労者の雇用と収入,若年層が教育を受ける機会等へのマイナスの影響は相当深刻なものになると予想される。政府は雇用調整助成金,各家庭への現金給付,売り上げが急減した中小企業への持続化給付金,納税等の支払い猶予,無利子・無担保融資等の支援策を用意しているが,対応が遅くセーフティネットの役割を果たしていないとの批判もある。
 感染症の拡大に対して,医薬的介入(試験,判定,隔離,治療,治療薬,予防ワクチン開発)としっかりと連携して上で述べたような非医薬的介入によって感染拡大を予防し同時に社会的インパクトを緩和する必要性は公衆衛生学で以前から指摘されてきたが,社会科学でこのことが十分に考えられてきたとは言えない。例えば空間経済学では都市・産業の集積は経済発展とともに必然的に進むものとされるが,感染症拡大のリスクについて考慮した研究はほとんどない。ただし歴史人口学では,その泰斗である速水融氏を中心に「都市蟻地獄仮説」、すなわち都市への人口集中がもたらす衛生環境の悪化が人口動態に及ぼす悪影響が早くから分析されてきた。この点からも足元の出来事だけでなく歴史から学ぶことが重要であることがわかる。 今回の新型コロナウイルス危機の国内および諸外国の経験や,100年前のスペイン・インフルエンザ等の歴史的事実も含めて先行研究から論点を整理し,今後の本格的な研究計画を策定し,大型研究費の獲得を目指す。社会科学だけでなく工学系,人文系,医学系の研究者の知見も取り入れて次項に掲げる研究計画を実施する文理融合の共同研究体制を整えていくことが本研究計画の目的である。

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