社会制度研究部門 新型コロナ禍における個人の自由の制限と許容:サーベイ実験による実証研究*

構成メンバー

★はプロジェクトリーダー

★松村 尚子(法学研究科・准教授)
 Yoshiharu KOBAYASHI(University of Leeds School of Politics and International Studies Lecturer)
 Tobias HEINRICH(University of South Carolina Department of Political Science Associate Professor)

研究の目的と概要

 【目的】 新型コロナウイルス対策をめぐる争点の一つは「個人の自由の制限」の問題である。感染症の蔓延を防ぐには、社会・経済活動の一部を制限したり監視することが効果的だとされるが、自由の制限というトレードオフを伴う。さらに、行き過ぎた制限や監視は社会の排外意識や差別を助長する。人々は、どの程度・どのぐらいの期間であれば、自己や他者に対する自由の制限を許容するのか?また、その考慮には何が影響するのか?本研究は、コロナ禍で実施される(される可能性のある)、個人の自由の制限を伴う諸政策に対する人々の支持に影響する要因を実証的に明らかにする。
【概要】 問いを明らかにするために、日本・米国・英国の3か国の市民を対象にして、オンラインサーベイ実験を行う。具体的には、特定の政策(移動制限、時短営業、出入国制限など)への支持に影響する3つの要因:①政策の正当性の源(科学的証拠・法的位置づけ)、②政策の主体(政府・国際機関・専門家)、③政策のフレーミング(宣伝の仕方)の効果を検討する。①~③について、異なる組み合わせを反映するシナリオを作成し、各シナリオにおける人々の当該政策への支持を問う。支持の差を比較することで、人々が自己や他者への自由の制限を許容する条件や、それらが日英米で異なるのかを検討する。
【貢献とセンターの設立目的への合致】 本研究は、①社会問題の解決、②先端的な研究、③国際共同研究の推進というセンターの趣旨に強く合致する。①社会問題の解決であるが、新型コロナを含む感染症対策の成功には、人々による政策の遵守が必要である。遵守を促しつつ、行き過ぎた自由の制約を生まない政策をデザイン・実施するために、人々が自由の制限を許容する条件を明らかにすることが急務である。②先端的な研究については、サーベイ実験の手法を駆使することで、世論に影響する様々な要因の中で、特に強く効果を持つ要因やその組み合わせを実証的に明らかにできる。コロナ禍における自由の制限の問題は、学術的・政策的な重要性から各国で世論調査が進むが、単なるアンケート調査が多く、因果効果の検証は途上である。加えて、既存調査の多くが1か国を対象にしている(特に米国に偏重)。本研究は、数少ない日本を含む多国間比較実験となる。社会制度・地理・感染状況において異なる3か国を対象とすることで、一般化可能な見地を提供する。最後に、③本研究は、それぞれ日・英・米に研究拠点を持つ3名の研究者による国際共同研究プロジェクトである。

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