企業のデジタル革新への取り組み

構成メンバー

★はプロジェクトリーダー

★伊藤 宗彦(経済経営研究所・教授)
 下村 研一(経済経営研究所・教授)
 西谷 公孝(経済経営研究所・教授)
 松尾 博文(経済経営研究所フェロー・准メンバー)

研究の目的と概要

社会のデジタル化の速度が著しい。本年度の新しい内閣においてもデジタル庁が新設されるなど、社会のデジタル化への対応が急がれている。製造業にとってデジタル化が果たすべき役割は明確である。たとえば、生産量を決めるための需要予測、生産計画の策定、キャパシティ計画など生産の管理、サプライチェーンにおけるモノの流れの統合管理、また、プラットフォーム・ビジネスやシェアード・エコノミーにおける顧客のマッチングなど、デジタル化は確実に社会基盤上で広がりつつある。デジタル化は、製造業にとっても競争力と直結しており、特に生産現場、サプライチェーンにおいて、独自のエコシステムを規定する要因となる。企業のデジタル化といった今まで分析されてこなかった変数が、製造業、特に、中小製造業の競争力をどのように保持、或いは、高め、新たなエコシステムの形成に繋がるかを明らかにするのが本研究の目的である。本研究は、デジタル化した社会基盤の変化の中で、日本企業が守り抜いてきたモノづくりの強みが、様々な外部環境の変化に対して、現体制を維持・発展させることが困難になったことに着目する。特に、産業の基盤である中小製造業は、デジタル化という環境変化に真剣に対応していかなければならない時期にある。日本の産業構造では、大企業が大量にモノを生産し、グローバル市場での競争で優位な限り、下請け企業としての中小製造業には問題が生じない。しかし、グローバル競争力を失った大企業の下請け企業は、そのモノづくりの力を発揮できない。つまり、現状の中小製造業は、既存の親会社のみに頼るのではなく、新しいエコシステムの一部となり新規顧客を開拓しなければ、成長が見込めない状況にある。
なぜ新たなエコシステムの一員となるのは困難なのか、その理由は、中小製造業によるデジタル技術の適応が、大企業に比べて後れを取っている点にあると考える。情報技術は、アナログからデジタルへと情報の媒体が進化し、情報処理はメインフレームからクラウド・コンピューティングへと変化を遂げている。それに伴い、現場レベルのデジタル化の導入・実践は、国際競争において後れを取る状況に陥っている。学術的な研究の成果として、AIやIoTといったデジタル化の研究はデーターサイエンスの領域で進められており、製造現場の実践的な複雑さにも対応できるレベルに達している。一方で、こうしたデジタル化という社会変化への適応という面で、日本企業がどのように対応するべきかという議論は、あまり進展していない。デジタル技術が世界的に広まり、グローバル競争が激化した現在、日本では、大企業を中心に、DX(デジタルトランスフォーメーション)というデジタル化による変革に取り組み始めている。本研究では、日本のモノづくりのエコシステムは、デジタル化した環境下ではなぜ強みを発揮できないのか、デジタル化した社会基盤上でも日本のモノづくり力を発揮できるエコシステムとはどのようなものか、そこで個々の製造業がサバイバルのために能動的にどのようなDX戦略をとっていくべきか、こうした問いに答えを出すのが本研究の目的である。

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