新型コロナウイルスの流行が就労者の心理・行動に及ぼす影響*

構成メンバー

★プロジェクトリーダー

★江夏 幾多郎(経済経営研究所・准教授)
 神吉 直人(追手門学院大学経営学部・准教授)
 高尾 義明(東京都立大学大学院経営学研究科・教授)
 服部 泰宏(経営学研究科・准教授)
 麓 仁美(松山大学経営学部・准教授)
 矢寺 顕行(大阪産業大学経営学部・准教授)

研究の目的と概要

申請者は,2020年度,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行する状況に,日本の就労者がどの程度,どのように適応してきたかについて調査を行い,その実態を多様な側面から明らかにしてきた。COVID-19の流行や就労者の生活環境に関する様々な変数のほか,経営学,その中でも特に組織行動論で着目されてきた職務状況,職務上の心理や行動に関する多くの変数に着目し,就労者の就労のあり方,それを形作る要因についての,COVID-19特有性あるいは普遍性について検討した。
具体的には,社会が定常的な状態にあることを前提として行われてきた先行研究に依拠し,そこで提示されてきた変数,あるいは変数間の関係性が,COVID-19流行下においてどのように生起するか,ということを問うた。例えば,リモートワークへのシフトを促進する要因とそれがもたらす影響,就労環境の変化がワーク・ファミリー・コンフリクトに与える影響,離職理由,不安の先行要因,などについて検討した。また,関連する先行研究を踏まえつつも,COVID-19の流行という特有の状況を捉えるために,独自の変数の作成,変数の組み合わせ,あるいは変数間の関係性の解明を行なった。例えば,肯定的感情と否定的感情の混合,現実への理解や統制感を伴わない空虚な幸福感,所属水準と感染症対策との関係性,であった。
申請者は,こうした分析結果を著書の形でまとめ,近日中にミネルヴァ書房より刊行予定である。書籍では,COVID-19流行の状況やそれに関連する近年の実証研究のレビューを行なった上で,10にわたるオリジナルな実証分析論文を所収している。本研究の最大の価値は,日本の実態について網羅的に検討し,かつ公表されている(公表予定である)ほぼ唯一のものである,ということである。ただ,本研究は日本語で執筆されたものである。本研究が網羅的に描写した日本の実態を日本国内のみならず海外に発信する価値は高く,研究助成を申請する次第である。

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