新型コロナウイルス対策における感染予防と経済活動を両立しうる機関調整・公助・国際協力のあり方に関する提言型研究*

構成メンバー

★はプロジェクトリーダー

★金子 由芳(社会システムイノベーションセンター・教授)
 豊田 利久(国際協力研究科・名誉教授)
 北後 明彦(都市安全研究センター・教授)
 本荘 雄一(兵庫県立大学減災復興政策研究科・特任教授)
 赤西 芳文(近畿大学法科大学院・教授、弁護士)
 塩見 有美(アジア防災センター・主任研究員)
 Abel T. Pinheiro(人と防災未来センター・主任研究員)
 平 力群(中国天津社会科学院・教授)
 金 暎根(高麗大学グローバル日本研究院・教授)
 Kristoffer Berse(フィリピン大学公共政策学部・准教授)
 Rudy Lukman(ランプン大学法学部・後法部長、教授)
 Munin Pongsapan(タマサート大学法学部・法学部長、教授)
 Duong Anh Son(ホーチミン経済法科大学法学部・法学部長、教授)
 Michael J. V. White(ニュージーランド弁護士)
 松村 圭悟(国際協力研究科博士後期院生・准メンバー)
 Ye Naing Lin(神戸大学/総合行政研修所 国際協力研究科博士後期院生・准メンバー)
 Jung Minjung(神戸大学/高麗大学 国際協力研究科博士後期院生・准メンバー)
 Vorlachit Hadoheuan(神戸大学/ラオス首相府省 国際協力研究科博士後期院生・准メンバー)

研究の目的と概要

 本研究は、コロナ感染症対策における感染防止と経済的影響との調整の在り方について理論的に究明し、それを可能にする組織体制、公的補償・支援の制度設計、また国際協力の課題について、国際比較を加味しつつ実践的な政策提言を行うことを目的とする。
 第一に、日本の新型コロナウイルス感染症対策においては、災害対策基本法を政令指定(2条1項の「異常な自然現象」)により適用することなく、新型インフルエンザ対策特別措置法(平成24年)の改正による「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」が実施された(法32条)。これにより、災害対策の組織体制や支援体系をあらゆる災害リスクに及ぼす統合型ではなく、感染症を切り分ける並列型アプローチが維持された。経済学的には、自然災害は自然現象(地震の震度、津波の高さ、気象要因など)として発生が一定程度予測可能であるが、パンデミックの感染は発生確率が予測できず、また人間行動の動きも影響し、収束までの時間軸に影響するなど、予測可能な「リスク」とは異なる不確実性下の事象である。本研究は、自然災害と感染症のハザードとしての性格の相違に依拠した理論的に妥当な制度設計を提言する。その際、国際比較を交え、また2009年の新型インフルエンザ対策等で先行経験のあった神戸市・兵庫県などの対応例の検証を加味する。(豊田、本荘、松村、Jung他)。
 第二に、感染防止と経済的影響をバランスする公的支援の制度設計について、感染防止に協力する経済主体への公的な補償措置、直接的な支援措置、金融機関等を介した企業再生手法による間接的な支援措置、などの複数の制度選択肢が考えられる中、いずれが妥当かつ有効かを国際比較を交えて検証する。日本では、新型インフルエンザ対策特別措置法の適用により、法的根拠に基づいた外出自粛要請や施設管理者への使用制限停止要請・指示(45条)、土地・物資等の強制収用(49条・55条)などが可能とされ、これら措置への協力は事業者・国民の責務とされたが(4条)、同時に基本的人権の尊重が明記され(5条)、憲法29条2項に基づく必要最小限度の比例原則が配慮されねばならない。これを超える特別の犠牲に対しては損失補償が必要となる(62条)。現実には、外出自粛要請や施設使用制限要請に伴い、営業停止・解雇・倒産などの経済的損失等を余儀なくされた国民が国の経済的支援を要求し、これに応えて国の緊急経済対策や自治体の追加支援措置が乱立したが、財源の枯渇と共に縮小し、感染防止策の抑制効果も見受けられる。本研究では国家が行う義務としての補償・公助の法的性格を明らかにすることで、感染防止策を阻害しない経済的対策の方向性を提言する。方法として、過去の自然災害における公助措置との対比、また感染防止を徹底したニュージーランドや韓国、逆に経済活動を優先し集団感染に期待したスウェーデンなどとの国際比較を踏まえつつ、理論的整理を行う(金子、北後、White、他)。
 他方で新型インフルエンザ対策特別措置法(3条)は、アジア諸国その他の国際連携と国際協力を国の責務の一とする。国境を越えて世界に蔓延する新型コロナウイルス感染症を乗り越えていくうえで、国際協力はまさに不可欠な課題である。そこで本研究は第三に、アジア地域全域での国際協調の方向性について検討する(塩見、Florano、Vorlachit、Ye他)。

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