構成メンバー
★はプロジェクトリーダー
★江夏 幾多郎(経済経営研究所・准教授)
庭本 佳子(経営学研究科・准教授)
田中 秀樹(同志社大学政策学部・教授)
余合 淳(南山大学経営学部・准教授)
研究の目的と概要
我々はこれまで、日本の人事管理に関する研究界と実務界の50年分の言説についてデータベース化し、計量書誌学的分析を通じて双方における関心の推移や異同を解明してきた。研究者と実務家の関心のずれは大きいものの、そこに確かに存在することなる関心の架橋、協働の道筋について、分析結果に基づく提案を行なった。ただしこの提案は、研究者と実務家への直接的な情報集取の結果ではない。そこで今年度は、プロジェクトリーダーが会長を務める日本労務学会の会員(約800名)の全体、および度々協働を重ねてきた(株)HRビジョンの「日本の人事部」メールマガジン登録者(約31万人)の一部を対象にした質問票調査を行い、人事管理に関わる研究者と実務家の双方が(1)どのような知識や事象に知悉し関心を有しているか、(2)どのような情報収集や学習を行なっているか、(3)社会関係を有しているか、(4)自らの業務やキャリアについてどのような現状認識や展望を有しているか、などについて確認する。調査結果の計量的分析、あるいは自由記述の内容分析を通じて、人事管理の研究と実務の活性化に向けた研究者や実務家の活動や協働のあり方について示唆を提出することを目指す。こうした経営現象に関する「知識社会学」的な研究は、海外をフィールドにした海外の研究者によるものは一部見られるが、日本での事例は皆無に等しい。日本の実態を紹介することは、世界の経営研究に一石を投じることになる。また、日本社会の宿痾の一つは労働生産性や就労上の意欲や健康の低さであり、人事管理の研究や実務の改善は、こうした社会課題の解決に資するものと考えられる。